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飲食業の労務管理と使える助成金

新規開業に使える助成金

 ワークスケジュール管理とシフト制
 飲食業は人が相手のビジネスであるため労務管理は最大の課題です。繁盛店が行き詰まる最大の理由は、いまもって「人」の問題。サービス担当の質が落ちたり、調理担当者が変わったことで商品の品質が低下して客離れが進む、というのがよく陥るパターンです。

 一般に飲食店では、季節、月、曜日、そして時間帯によって、来客数に大小の波があります。いつも同じ人員配置をしていたら、非常に効率が悪くなってしまいます。
 来客数の多いときはお客に対応し切れずに機会損失を起こしてしまうし、反対に来客数が少ないときは人手が余りムダな人件費によって利益を圧迫してしまいます。
来客数にかかわらず、常時すべてのお客に満足を提供できる人員態勢づくりが必要となります。

 来客数に応じた人員配置計画をワークスケジュールと呼びます。たとえば、ランチタイムのピーク時にはホール何名、キッチン何名、アイドルタイムは何名というように人員態勢を変えていく。

 ワークスケジュールを作る店長は従業員一人ひとりについて、その能力や技術の習得度を正確に把握した上ではじめて適切な人員配置を組むことができます。
 単なる頭数合わせではなく、きちんと教育・訓練された人員を必要な人数だけ、計画的に配置することがカギとなります。飲食店の労務管理は、店長の教育・訓練技術と人格に負うところが大きく、そのなかでもワークスケジュール管理は日ごろの店長の労務管理の集大成であり、店長にとってもっとも重要なマネジメント技術と言えます。

シフト表の作り方は、
@予想売上高を決めます。
A目標人件費を決めます。
 目標人件費は予想売上高に目標人件費率を乗じます。
B目標人件費を平均時給で除して総労働時間数を出します。
平均時給は、たとえば当月が11月なら、前月の10月の人件費総額をその月の全従業員の総労働時間数で除して算出する。
C総労働時間数であるべき人員シフト表を作成する。

 シフト制をうまく調整することで、従業員に残業させずに長時間営業を行うことが可能となり、多くの飲食業経営者の悩む長時間労働・残業対策も解決できます。
 
業態によっては、季節や曜日で来客数が大きく違う店もあります。この場合は、パート・アルバイトを除く正社員に対しては変形労働時間制を導入することも検討されます。
 変形労働時間制についてはこちらを参照。
 
 希望シフト制の導入
 不況下でもパート・アルバイトの思ったような採用ができないと悩む経営者は多い。これまでの固定シフト制から希望シフト制へ変えることで、この問題に対応している事例もあります。

 希望シフト制とは、ファストフードチェーンで導入されていることが多く、働く側が働ける時間帯のみを雇用側に提示し、その中から雇用側が必要な時間だけをピックアップしてシフト表を作っていく方法。週に何回、何時から何時までと雇用側が勤務時間を決めてしまう固定シフト制とは大きく異なっています。
 働く側にとってのメリットは、休みたいときにはシフトを出さなくて済み、サークル活動などで働ける時間が不規則な人は働ける日だけを提示すればよいので、勤務時間をコントロールしやすいことにあります。

 この場合、多くの人が同じ時間を希望した場合、仕事に入れないこともあり収入が不安定になることもあります。ただし、希望シフト制を希望する人は、夫や保護者の扶養家族になっている主婦や学生であることが多く、扶養範囲内の収入(年間103万円)に抑えたい意向など、あまり多くの収入を希望していないことが多い。

 雇用側のメリットとしては、たくさんの人を雇用しておくことでシフト作成時の選択肢が広がり、安定したシフト表を作ることができる点にあります。ただし、指定の日時までに必ず各自のスケジュールをシフト表に入れて、それを守ってもらう必要があります。ルールを徹底し守らせる努力が欠けてくるとシフト表が作れなくなります。特に休みたいときには休ませてくれる、といった仕事に対する甘えが出てくると穴があきやすくなるので注意が必要です。
 パート・アルバイトの賃金設定と評価
 能力とお店への貢献度の高いパート・アルバイトを増やすためには、基本的には高めの時給を設定し、応募してくる人たちの数を増やことが必要です。多くの候補から選抜すれば優秀な人材を採用しやすくなります。

<時給設定のポイント>
@初任時給を周りの同業種との募集時給に比べ100円上げる。時給100円の違いは応募の反応が大きく変わるためである。人件費は当然アップするが、その分求人誌に対して支払ってきたリクルートコストおよび新人に対して初期トレーニングとして必要な人件費が節約される。
 その一方、人件費管理の観点から昇給は無理をしない程度に抑える。
A注文を聞いて料理や酒を出すだけの店員をT等級、フロア全体も見ている店員はU等級と職種によって区分する。
B時給表を明示するすることで、パート・アルバイト全員に共有化する。
C評価基準を明確化し、昇給時に公正な格差をつけること。例えば3段階評価の場合、A=3号、B=2号、C=1号アップいう昇給評価を設定する。
そのための評価項目を整備し、全員の納得性を高める。


<評価項目>
・規則や指示に従い、服務規律をよく守り業務に専念できたか。
・どんな仕事でも積極的に引き受ける熱意が認められたか。
・仕事のやり方について改善工夫があったか。
・仕事の内容をよく理解して、無駄のない段取りをしたか。
・仕事の処理は早かったか。
・仕事の処理は正確だったか。
・連絡や報告は適切であったか。
・仕事に対する習熟や上達ぶりはどうか。
・遅刻や欠勤などがあったか。
・職場の秩序を乱したり、トラブルを起こすことはなかったか。


 パート・アルバイトの働く意欲をアップさせる就業規則づくり
 いまや飲食店の経営はパート・アルバイトの労働力抜きには考えられない時代です。お店の総労働時間の70〜80%がパート・アルバイトというお店も珍しくはないし、ファーストフードチェーンに至っては、実に90%がパート・アルバイトで占められています。
 飲食店のパート・アルバイト労働力への依存度が高い理由は二つあります。ひとつは人件費が安くつくこと。もうひとつは、お店の繁閑に応じた効率的な人員編成ができることです。

 サービス業である飲食業はお店の人間関係によって経営が大きく左右されます。従業員にヤル気を起こさせ、気持ちよく働くことによってその人の能力を引き出していくためには、公平なルールづくりが不可欠です。そのルールが就業規則です。
 就業規則は、従業員を縛りつける規則と考えがちですが、従業員のやる気が店の消長を決定づける飲食業にとってそういうマイナス思考からは「いい人材」が育ちません。

 飲食店の就業規則は、誰もが同じ条件で働くことができ、さらに本人の努力や能力に応じて報酬も高くなることを従業員に約束するためのもの、という認識が必要になります。
 パート・アルバイトを十分に活用し、戦力化するにはまず、彼らが働きやすい環境をつくることが大切です。
働きやすい環境とは、
@勤務時間の選択ができること
Aすべての仕事が標準化され、会社のスタンダードが
わかりやすい形で示されていること
B評価・待遇の制度が確立されていること
の三つの要件を満たしていることです。

 パート・アルバイト就業規則のポイント
■総則の目的の部分では、お店の経営姿勢、理想、目的、信条を平明な言葉で明らかにしパート・アルバイトに何を求めているかを明瞭に示すことが必要です。
このことで、この就業規則はお店と従業員がかならず守らなければならない共通のルールであることをはっきり認識させます。

■パート・アルバイトに特に協調して守ってもらいたい事項は、疑問がないようにわかりやすい表現が必要です。

■古いパート・アルバイト就業規則では、近年の法改正により必要となった記載事項が欠けていたり、変更事項が直っていないことも多いです。
特に注意したいのは下記の点です。
@パートタイム労働法の改正により、パートタイマーを雇い入れる際には、「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」が書面で明示することがあらたに義務づけられました。これに違反すると過料に処せられます。

Aパートタイム労働者との雇用契約が有期契約(期間のある契約)の場合は、契約期間満了後の契約更新の有無の明示が必要となります。もし、更新する場合がある旨を明示したときは、更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならなりません。
さらに、会社は契約を更新しない理由について証明書を請求された場合は遅滞なく証明書を交付しなければなりません。

B1年を超えていなくても3回以上更新した場合は雇い止めの告知が必要になりました。

C昭和時代に作られた昔のパート・アルバイト就業規則には年次有給休暇の規定がないところがある。また比例付与制度になっていない。さらに、継続勤務要件が6ヶ月ではなく、改正前の1年となっているところもある。
 平成10年から、年次有給休暇の付与日数も2年6ヶ月を超える継続勤務年数1年については2日ずつの増加になりましたが、1日と変更されていないところも多い。

D労働条件の明示義務が平成10年から拡大されましたが、改正前のままのところも結構多い。

E「解雇理由」の記載がないところも多い。
■パート・アルバイト就業規則はそのすべての周知が必要になります。しかしながら全体ではかなり膨大で、煩雑になりすぎて本人の理解が得られません。
 したがって、全文はいつでも本人が参照できるようにしておき、そのなかでも労働条件の絶対的明示事項服務規律などお店の運営上欠かせない特に重要な条文だけをピックアップしたものを別に複製し、本人に渡して説明し確認のサインを求めるなど、周知徹底を図ることが大事です。

パート・アルバイトの就業規則の作成についてはこちらを参照



〜パートを使って事業を起ち上げ〜
パート・アルバイトの労務管理全般についてはこちらを参照。

外国人の採用についてはこちらを参照。

外食産業の市場調査資料:外食市場総覧

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